ユニコーン企業のひみつ ―Spotifyで学んだソフトウェアづくりと働き方
レビュワーとして関わらせていただいたため「ユニコーン企業のひみつ ―Spotifyで学んだソフトウェアづくりと働き方」を発売日より一足早く献本いただきました。わーい。
ユニコーン企業のひみつ ―Spotifyで学んだソフトウェアづくりと働き方
- 作者:Jonathan Rasmusson
- 発売日: 2021/04/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
読者&レビュワーの2つの視点から感想を書きたいと思います。
読者として
ワクワクする
著者はアジャイルサムライで有名なJonathan Rasmusson氏です(以降、ジョナサンと呼ぶことにします)。 本書はジョナサンが在籍していた頃に行っていたSpotifyの取り組みや自身の経験について書かれています。
この本は、読み始めるととてもワクワクします。語り口調で親近感が沸くし、絵が多く表現が面白いのです。この雰囲気はアジャイルサムライと似ていますね!
例えば、"スタートアップは「火星」から来た"、 "エンタープライズ企業は「金星」から来た"という表現は、スタートアップとエンタープライズ企業のそれぞれを取り巻く環境の違いを表した表現なんですが、こう書かれると近未来感が増して、「ユニコーン」という言葉がより一層引き立つ感じがします。こういうのが最後まで飽きずに読める仕組みなんですよね。
これはSpotifyの取り組みの話
私がこの本を読んで感じたことは、ユニコーン企業は成功に向けてのトライをし続けているということです。
Spotifyといえば"Spotifyモデル"が有名ですね。
本書でも、この"Spotify"モデルを軸とした様々な取り組みについて書かれています。
ですが、現在SpotifyではSpotifyモデルを使っていません*1。「なんだ、"Spotify"モデルの話をしておいて、当の企業は使っていないなんて失敗したモデルの話か。」と思われるかもしれませんが、私が大切だと感じたのはこのモデルが良いか悪いかではなく、Spotifyではまずメンバーやチームを信頼するところがスタートだということ*2、模倣ではなくトライした結果から学ぶということ、そして時にはやめることもあるということで、こういった姿勢がいち企業をユニコーンへと成長させるのだと感じました。
"Spotify"モデルに限らずですが、これを模倣すればうまくいくなんてものは私はないと思っています(ソフトウェア開発においては特に)。
なのでSpotifyがSpotifyモデルを使っているかどうかはあまり重要なことではないと思いました。
皆さんがもし本書をお読みになる際には"Spotify"モデルがどんなものであるか知ると同時に、Spotifyの様々な取り組みの方にもより興味を持って読んでいただけると良いかと思います。
レビュワーとして
今回はレビュワーとして本書の出版前から関わらせていただきました。
まずはこのような貴重な機会を与えてくださった島田さん、角谷さんにお礼申し上げます。
レビュワーの人数×フィードバックの数を考えると相当な量だったように思いますが、細かい指摘に対してもより伝わる表現を考えてくださったり、ただひとつの言葉に対しても何度も議論を重ねて選定されていました*3。
翻訳とは変換作業ではなく、言葉から著者の想いを想像し読者に伝える架け橋なんだということを間近で感じられたのは最高でした。
微力ながらそのお手伝いができたとすれば大変うれしく思います。
そして他のレビュワーさんの視点や解釈も勉強になりました。
個人的な反省点としては、指摘内容に加えて「こう直したらより良いのでは」というアイディアを一緒に添えたりしていたのですが、素人目線のアドバイスは時として返って混乱させることがあるので、それよりも、指摘箇所に関して「なぜそう思ったか」が明確に伝わるようなフィードバックに全力を注いだほうがレビュワーとしての使命を果たせたような気がしました。よし、次に生かそう。
レビュワーとして参加することは一読者では得られないような学びの機会がたくさんあり、この一冊は私の宝物になりました。
Spotifyで実際に取り組まれていた組織作りのヒントがたくさん書かれていてかつ読みやすいので、興味のある方はぜひご覧になってください!