アポロシンドローム:優秀な人材を集めたチームが最強ではない理由
この記事は「ScrumFestSapporo2020 Advent Calendar 2020」の21日目の記事になります。
前日の記事はこちら。
みなさん「アポロシンドローム」という言葉をご存じですか?
私はこのnoteで知りました*1。
そして、この記事を読んでいて「あれ、そういえばアポロシンドロームみたいなことを経験したことがあるぞ」ということを思い出し、アポロシンドロームについてもう少し考えてみたくなりました。
アポロシンドロームとは
アポロシンドロームとは、チームにおける役割論の父として知られているメレディス・ベルビン博士が提唱した「優秀な人材を集めたチームが優秀な結果を生み出せるわけではない」という現象のことです。
ちょっとよくわかりませんね? では先へ進みましょう。
メレディス・ベルビン博士の実験
メレディス・ベルビン博士は以下のような実験を行いました。
まず1チーム5人前後のチームを複数作ります。
その際に、分析能力や精神的能力が高いことが適性テストによって学術的に証明されたメンバーだけで構成されたチームも作りました。そして、このチームを当時アメリカが月面着陸に成功したアポロ計画にちなんで「アポロ・カンパニー」と命名しました。
その後、アポロ・カンパニーを含む複数のチームに対し、分析能力や精神的能が決め手となる演習を行ってもらいました。
分析能力や精神的能が高い人達で構成されているアポロ・カンパニーが圧勝すると誰もが想像していましたが、結果以外なものでした。
アポロ・カンパニーは最下位に終わることがしばしばあったのです*2。
優秀な人材のみで構成したにもかかわらず、なぜ結果が伴わなかったのでしょうか? これには、アポロ・カンパニーのチームの運営方法にある種の欠陥があったからだと考えられています。
アポロ・カンパニーで起きていたこと
アポロ・カンパニーが結果を出せなかったその裏側ではこんなことが起きていました。
自分の意見を採用するように他のチームメンバーを説得しようとしたり、相手の主張の弱点を見抜くことに力を発揮していた。
チームメンバーは、仲間が何をしているかを考慮することなく自分の好きな路線に沿って行動する傾向があり、チームとしての管理が難しいことが判明した。
チームは何が起こっているかを認識していたにもかかわらず対立を避けたりしてしまい、意思決定に問題が生じていた。
誰も自分の意見を曲げず、また相手の意見を変えることもできなかった結果、まとまりがなく本来の目的ではない論争に終始し、意思決定ができないまま時間だけが過ぎて行っていたのです。
アポロ・カンパニーはチームというより"個人の集まり"って感じがしますね。
このことから、優秀な人材をたくさん集めただけでは優秀な結果を導き出すことはできないことがわかりましたが、チームという形で力を発揮するにはアポロ・カンパニーにはなにが足りなかったのでしょう。
アポロ・カンパニーに足りなかったもの
アポロ・カンパニーは個人プレーに終始するあまりチームとしてどこへ向かおうとしているのかという意識が薄かったのではないかと私は考えています。
自分の意見を通すことが目的になったり、それを押し通すことでチームのまとまりを欠くようなことがあれば、意見は正しかったとしても行動として正しくないのだと思いました。
チームで大切にしたいこと
チームとしての正しい行動ってなんでしょう?その答えはきっとチームによって様々なんだと思います。
なので、ここでは私の観点でチーム戦で大事だと思うことを2つあげてみました。
自の100点よりも、チームの70点
チームで活動していると自分の思い通りにならないこともたくさんありますが、自分の意見を周りに納得させることよりも、チームとしてみんながそこそこ納得感をもてるポイントを探すことのほうが大切だと思っています。
自分で納得できると自分の意志で前進できるじゃないですか。ということは、チームで納得できれば、みんなが自分の意志で前進できるということです。
納得できなかったりやらされている感が強いと、結果チームとしての歩みは遅くなります。ここがアポロシンドロームに陥るところの1つかなと。
私の心がけとしては、「こうすべきだよね」「これは間違いです」のような断定的な言葉は使わないように気を付けていますね。チームで合意するのに、こういう表現ってあまり必要ないかなぁと思います。
自分がアイディアを持っている時も「こういうやり方思いついたんだけど、どうですかね?」という提案レベルにとどめて、あとはディスカッションで決めています。
個人が100点で満足する状態よりもチーム全員が70点の満足を得られるようにし、チームは「私vsあなた」で構成されるものではなく、ただ1つの「私たち」の形を目指したいです。
感謝は人へ届け、解決は問題へ届ける
チームで活動していると自分の思い通りにならないこともたくさんあります(2回目)。
「もっと早くやってほしかった」「それは先に言ってほしかった」などの気持ちになることもありますが、そこは一旦脇に置いてまずはやってくれたことへの感謝、言ってくれたことへの感謝の気持ちを忘れないようにしています。これはきちんと言葉で伝えるのが大切!
そのうえで「より早く」「より先に」という部分についてはなぜそうしてほしいのかをロジカルに考えて、起きた事実だけを伝えるようにしています。
感謝は人へ届けるもの、解決は問題へ届けるものという観点を忘れずに、メンバーへのリスペクトを常に持ち続けていこうと思っています。
おまけ
アポロシンドロームって特に「レッドばかり集まった戦隊チーム」みたいなのが陥りやすいかもって思った。
たぶん得意分野がぶつかっちゃうから対立構造を生みやすいのかなぁとか考えた。
食いしん坊キャラのイエローとかお色気キャラのピンクとか、ちゃんと意味あるんだよなぁ。
昔赤レンジャーばっかり集めた映画かなんかがあった気がするんだけど、その時の各赤キャラがどう立ち振る舞ったのかとか気になってきたな。