SCRUM MASTER THE BOOK がすごく良い本だった
SCRUMMASTER THE BOOK 優れたスクラムマスターになるための極意――メタスキル、学習、心理、リーダーシップ
- 作者:Zuzana Sochova
- 発売日: 2020/09/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
この記事は「ScrumFestSapporo2020 Advent Calendar 2020」の2日目の記事になります。
前日の記事はこちら。
SCRUM MASTER THE BOOKを読了しました。
読んだ直後の感想は「Zuziが苦労して積み上げてきたスクラム道のノウハウをこんなにもあっさり教えてもらってよいのだろうか・・・」と少々申し訳ない気持ちになりました。
そう思ってしまうくらい、スクラムマスターとして必要なノウハウがぎっしりと詰まっている本です。
私は、スクラムマスターとは「SCRUMの中で一番何をしたらいいのかわからなくなる役割」だと思います。
「チームの自己組織化を助けるのがスクラムマスターの役目です」
「チームの障害を取り除くのがスクラムマスターの役目です」
というのは十分に理解しています。
でも、自己組織化を助けるって具体的に何のこと?チームの障害ってなに?取り除くためにスクラムマスターが取るべき行動は?
そこの答えは、チームや組織によっていつも変わります。
なのでスクラムマスターとしての正解がわからずモヤモヤすることが多かったのですが、この本はその気持ちに1つ1つ丁寧に答えてくれました。
この本を読む前と読んだ後で、特に自分意識が変わったポイントをあげていきます。
チームは"深く"観察する
これまでは、チームメンバーの言葉をよく聞いて、相談にのり、チームに今どんなことが起きているのかをできる限り把握することが観察だと思っていました。
ただ、それだけでは「スクラムマスターとして十分にチームを観察している」とは言えなかったように思います。これまでの観察に加えて
- チームは発達レベルのどの段階にいるか?
- チームには十分な説明や知識が足りているか?
- チームの関係性はどうか?良好な関係を築けているか?
- チームが自己組織化できない障害はなんなのか?
- チームが恐れていることはなんなのか?
などなど、ストーカーばりに観察してこそチームの状態にあったアプローチが選定できるのだと思いました。
患者さんによく効く風邪薬を処方するには、体調や症状を良くヒアリングしてからその人にあった薬を調合するように、チームの状態も深く知れば知るほど何が必要なのかが見えてくるのだと思います。
私は今まで、訪ねてきた患者さんに市販の薬を処方するようなお医者さんだったかもしれないなぁと思いました。
チームは常に揺らいでいることを忘れない
チームはいつも揺らいでいるものだというのを私はかなり忘れていて、この本を読んだときにかなりハッとしました。
今までScrumをうまくやれていたチームでも何かのきっかけでやりにくくなったりベロシティが下がることがあります。
でも「うまくやれていたチーム」に対しては「(ちょっとしたことには影響されず)これまで通りうまくやれるチーム」って思いがちじゃないですか?
チームの発達レベルが何かのきっかけで上がったり下がったりすることはよく考えれば当たり前のことなのに、そこって軽視しがちだなと思いました。
「チームは揺らぐ」ということを忘れずにいれば、おのずと深く観察することが必要だということに結びつきますね。
スクラムマスターには必要なスキルがある
私は、世の中にはスクラムマスターに向いている人と向いていない人がいると思っています。
これまではその違いについて - ファシリテーションが上手な人 - 人の話を丁寧に聞ける人 - カイゼンのための引き出しをたくさん持っている人 - 先天的な素質、人柄
というわりと感覚的な言葉で説明していました。
この本には「スクラムマスターには以下のスキルやコンピタンスが必要である」と具体的に定義されています。
こう定義してあると自分にはスクラムマスターとして何が足りないかが明確になり、成長のためのよいものさしになりますね。
スクラムマスターもレベルがある
1人のスクラムマスターがいきなり組織を変えることはできません。1人のスクラムマスターができることは「私の開発チーム」の自己組織化を手助けすることです。
ここから初めて、次に開発チームと関係のある人達との関係性を強化し、最後にはシステム全体を自己組織化することを目標にします。
このステップを進む過程で、1人のスクラムマスターではなくスクラムマスターランドができていることも必要です。
こうやって、1つの開発チームからシステム全体まで段階的に自己組織化を進め、共にスクラムマスター自身もそれと共に成長するのだと思いました。
まさにスクラムマスター道って感じ!
すべてが繋がっていることを忘れない
マインドマップを書きながら読むとよくわかりますがチームのレベル、部族、スクラムマスターとしてのスキル、コンピタンス、障害、変化・・・
これらは全て個々の考え方ではなく、繋がり合ってお互いに作用しているものです。
これまではスクラムマスターの成長とチームの成長はやや別のものじゃないかと考えていましたが、それは自分のスクラムマスターとしてのスキルやコンピタンスが足りないためにチームをうまく導けてないだけなんだと思いました。
逆に自分の成長がチームの変化に繋がるんだということがわかって、今はもうワクワクしかないですけどね!
まとめ
私もここに書ききれないほどの気づきがあったので、スクラムマスターをやる人は心得として一読することを推奨します。
チームの発達段階についてはエラスティックリーダーシップのアプローチも参考になりそうなのでこの機会にもう一度読み直したいです。
最後に、こんな素敵な本を翻訳してくださった皆様本当にどうもありがとうございます。 きっとこの先何度も読み直すと思う、素晴らしい本でした。
おまけ
余談ですが、この本はマインドマップを書いてみたら絶対にわかりやすいと思うので、別の機会に書いてみたいです。