いづいづブログ

アジャイルコーチになりたい札幌在住SEです。アジャイル札幌スタッフ&ScrumFestSapporo実行委員。Like:パクチー/激辛/牡蠣/猫/初期仏教

Joy,Inc ひとり読書会 #3 - 自由に学ぶ -

アドベントカレンダーの12/10の記事として「ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント」を1章ずつ読んで、個人的な感想を書いていこうと思います。

これまでの記事はこちら。

Joy,Inc ひとり読書会 #0 - いづいづブログ
Joy,Inc ひとり読書会 #1 - 僕が喜び(Joy)にたどり着くまで - - いづいづブログ
Joy,Inc ひとり読書会 #2 - スペースとノイズ - - いづいづブログ

3. 自由に学ぶ

仕事をしながら学ぶ

走りながら学ぶスタイルこそが、僕らの競争力の源だ。ペア作業を通じて、チームには学ぶ権利が認められているんだ。

「学ぶ権利が認められている」ってサラッと書いてありますが、これってすごくないですか?

IT業界は情報の移り変わりが非常に早い業界の1つです。 なので、いつも新しい情報をキャッチアップしたり、特定のスキルだけではなくより新しい技術を学んだりしなければ、今持っているスキルはいずれ使えなくなる日がくるでしょう。

そういう意味では「仕事をしながら学ぶ」というのは、当たり前に必要なことでありながら、学ぶための時間が確保されていない仕事のほうが多いのが現実ではないでしょうか。

こういった場合、その業務に必要なスキルをすでに持っている人をアサインすることが大半だと思いますが、これには以下のようなデメリットがあります。

例えばJavaの仕事だった場合はこんな感じです。

  • アサインされた人(=Javaのスキルを持っている人)はJava以外のスキルを習得する機会に恵まれない
  • アサインされない人(=Javaのスキルを持っていない人)はJavaのスキルを習得する機会に恵まれない

結果、スキルの幅は広がらずに属人化していきます。 技術スキルのみならず、知識や業務経験が属人化してしまうことを本書では「知識の塔」と表現しています。

ちなみにメンロー社では見込み客に対して「プロジェクトを進めながら学習をする」ということを事前に伝えていて、やはりいい反応をしない顧客も多いそうです。

でも、学びながら走ることによるメリットのほうが多かったという実績と、経験と熟練だけに頼ってはイノベーションは起こせないと強く信じているからこそ、理解してくれる顧客を自ら選択しているようです。

知識の塔を作らず、学びを共有する

デイブは僕のチームにいる重要な知識の塔だった。他の誰も追いつけない、深い技術知識を持っている人物だ。

その役員 *1は彼の名を知っており、僕にメッセージを送ったのだ。「デイブを大事にな。」

会社全体の価値、ひいては僕の地位も、彼にかかっている。たった一人のプログラマーに会社全体の価値、1999年時点で40億ドルの評価額が依存しているんだ。

デイブが2週間の休暇でいなくなるたび、僕が不眠になったのも仕方がない。

知識の塔が積み重なればなるほど「その人にしかできない仕事」が増えます。

こういうのがオンリーワンの価値として評価されていた時代もあったと思いますが、はい、すでにそういう時代ではなくなってます。圧倒的にデメリットのほうが多いんです。

以下、本書に登場するデイブという知識の塔を例にしてお話します。

まずデイブは、休暇の予定を組めません。顧客からの緊急事態にいつも備えなければならないからです。 しかも、現在のプロジェクトだけではなく、過去にかかわったすべてのプロジェクトに対して。地獄…。

仮に休暇をとれたとしても、戻ってくれば「デイブにしかできない仕事」が山のように溜まっています。
そうやってデイブにしかできない仕事をひたすらこなしている間に、面白そうな仕事は自分よりも知識も経験も浅い人にアサインされていくのです。

もし、こんな状況に嫌気がさしてデイブが辞めたいと思ってもプロジェクトの重要人物であるデイブをプロジェクトは離してはくれませんし、転職しようにも、デイブはこれまで1つの分野でしか深い知識をもっていないので、新しい技術も身についていないのです。

こうなってくるともう罠にすら思えますね。

そして、デメリットは本人だけではなく会社側からみても大きいのです。
もし、 その人が会社を突然やめたらどうなりますか? 知識というのはその人の中に溜まるもので、知識ごと会社を去ってしまうことになりますね。

明日からそこの知識がすっぽりと抜けた状態で同じ仕事ができますか? その人が会社をやめなければいいのですが、絶対にやめないという保証はどこにもありません。宝くじを買っている場合はなおさら!

このように知識の塔というのは組織全体のボトルネックなんです。

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なのでメンロー社ではペアプロという方法を通じ、学びや知識を常にを共有することで知識の塔を作らないようにしています。

仕事をしながら学び、それをチーム全体で共有し、知識の塔を作らない。 これが「自由に学ぶ」ということなんですね。

この章は、思いあたり過ぎて怖くなりました…。

長くなりすぎたので今日はこのへんで。

*1:リックが過去に働いていたインターフェイス社で、初めて参加する役員会議に参加していた他の役員